
| 2003.4.5 A.S.バイアット著 「抱擁 T・U」 文体がとても美しいと思った。ストーリーよりは文体の流れにずっと浸っていたい気分になった。 (数ページにも渡る長い詩編はかなりすっ飛ばしました・・ってダメ?) 19世紀末、世を儚むようにひっそりと生きた女流詩人クリスタベル・ラモットの存在が神秘的。 1980年代、アメリカから渡英した貧しい英文学者ローランドは、19世紀の桂冠詩人(王室のために慶弔や公的な詩を つくることを任命された優れた詩人)ランドルフ・ヘンリー・アッシュの調査のためロンドン図書館へ赴く。 ローランドはアッシュの蔵書の中から手紙の下書きを偶然見つける。、 それは19世紀の知られざる女流詩人クリスタベル・ラモットへ当てた情熱的な愛の手紙だった。 愛妻家で平穏な人生を送った大詩人アッシュには40年にも渡る秘められた恋があった! 証明すればアッシュ研究の大発見になると確信したローランドはリンカーン大学でクリスタベル・ラモットの研究を 続けている女性モード・ベイリーに協力を依頼。 モードはレズビアンで一生独身で通したと論じられてきたクリスタベル・ラモットの新事実に興味を持つ。 ローランドとモードは19世紀末に生きた情熱的な詩人のカップルを調査していく過程でたがいに 通じ合うものを感じ取るが、頭が固く何かと理屈っぽい学者同士なため(モードは美貌の持ち主だけれど訳あって 研究の殻に深く閉じこもっている。ローランドは恋人はいるが相性がいまひとつで、おまけに とても地味な性格の男なので読んでいてイライラする)寄せては返す波のように、つかず離れず ちょっとずつ・・まあ、この辺もそわそわさせられますね。19世紀末に生きた詩人たちの リアルな描写は実際に存在したかのように感じ取れるし、本書に載せられた難解な詩編の数々は 著者バイアットの作ということで膨大な知識量に圧倒される。 ミステリー仕立ての謎解きもスリルがあり、読了後の余韻がとても深く素晴らしい本だった。 |

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2003.3.10 パトリシア・コーンウェル著 「切り裂きジャック」 19世紀末ロンドンの夜を恐怖に陥れた切り裂きジャックについては数々の真犯人説がある。 ミステリー作家パトリシア・コーンウェルの本作で犯人とされるのはヴィクトリア王朝時代に かなり知られた芸術家であり現代ではその分野の権威とまで見なされている人物だ。 コーンウェルはお得意の最新科学に基づいた分析から、当時の資料を可能な限り集め 犯人とされる人物の足取りを緻密に追っていく(調査費用に7億円掛けた!)。 その壮絶ともいえる追跡は、無惨に殺された5人の売春婦(映画「フロム・ヘル」でヘザー・グラハムが 演じた切り裂きジャック最後の犠牲者メアリ・ケリーはありとあらゆる個所を切り裂かれ粉砕されていた) への弔いの想いが強く感じられた。犯人への憎しみの情も半端ではない。 切り裂きジャックがスコットランド・ヤードへ送った手紙に書かれた筆跡、イニシャル、線画、 犯人とされる人物が残した不気味な日記や宿帳の端くれに描いた線画(コーンウェルは犯人が 避暑に赴いたフランス片田舎の宿まで調査している!)の類似を見ると私もこの人物が 犯人だと思えてくる。ただしコーンウェルは被害者のあまりに悲惨な人生を想うあまり、時に感情が ほとばしり”そうだったろう””だったに違いない””だったと思う”など想像で筆が走っている個所が 散見されるのは残念なところ。この本には無惨な遺体写真が載っているので気持ちを 強くしてページを開いて下さい。 |


| 2003.1.26 佐藤さとる著 「だれも知らない小さな話」 日本を代表する本格ファンタジー小説、コロボックル・シリーズの生みの親、佐藤さとるさんがこれまでに綴ったエッセイを まとめられた随筆集。アイヌに伝承されるコロボックルとの出会いから名作「だれも知らない小さな国」が 執筆される背景、幼い頃の思い出、コロボックル・シリーズや著者の作品になくてはならない挿絵を描かれている 水彩画家村上勉氏のこと(本書も村上氏の挿絵が所々に織り込まれ懐かしい気持ちになった)。 小学生の3年生の頃、市場の近くの小さな本屋で「だれも知らない小さな国」という不思議に温かい タイトルの本が目にとまり、ひきこまれるように作品世界へ没入していった、私にとって本が好きなる きっかけを与えてくれた佐藤さとるさんと村上勉さん、ありがとう。 |

































