ショコラ
監督 ラッセ・ハルストレム
出演 ジュリエット・ビノシュ/ジョニー・デップ/ジュディ・デンチ
レナ・オリン/アルフレッド・モリーナ/キャリー=アン・モス




 チョコを口に入れたときの顔、それは万国共通。しかめっ面したおじさんも泣きべそかいてる子供も憂鬱な気分の女性も・・あの茶色の固まりの一片を口に入れると、頬の筋肉がゆるんで笑顔になります。フランスは片田舎の小さな村。その村の人たちは教会の教えを厳しく守り、静かに暮らしていました。冬のある日、村に娘を連れた若い女性ヴィアンヌがやって来て、チョコレートのお店を開きます。チョコレートのお店ってのが良いですね。お菓子屋でもなくパン屋でもなくチョコレートのお店・・。
 ヴィアンヌ役にはジュリエット・ビノシュ。彼女って少女のイメージがずっとあったのに、いつの間にか立派なお母さん顔になってました。ヴィアンヌはお店にやって来た村人ひとりひとりに合うチョコを選んでは渡していきます。村の人たちがヴィアンヌのチョコを口に入れた時の表情がとてもいい、生活に疲れ何の楽しみもない人たち。訝しげにヴィアンヌの差し出したチョコを見つめるとポイッと口に入れる。その途端どんよりした瞳がパッと輝き頬がほころぶ。この映画のテーマはまさにこれです。
 店の中でチョコレートを作っている場面もいい。どろりとした茶色の液体をゆっくり混ぜながら(大阪では有名な阪急電車の色です)型に流し込み固まったところを切っていく・・。本当に美味しそうでチョコレートが手許になくても甘い香りが漂ってきそうな場面です。甘党の人は何度も唾を飲み込んだのではないでしょうか。さてさて、村はちょうどカトリックの断食期間でした。村長のレノ伯爵は村の人たちが教義を守らずにヴィアンヌのチョコを食べていることを知ってびっくり!。ガチガチ頭の保守的な村長はヴィアンヌを村から追い出そうとします。そんな時、村にジプシーの一団がやって来ます。流浪の旅を続ける彼らはどこに行っても忌み嫌われる存在ですが、ヴィアンヌだけは何のこだわりもなく彼らと接します。ジプシーの中でギターをつま弾くハンサムな青年ルーをジョニー・デップが演じています。彼はこういうミステリアスな男がよく似合いますね。お互いよそ者同士のヴィアンヌとルー。ふたりは惹かれ合ってゆく。ジュディ・デンチはこの映画の顔と云っても良いと思いますが、彼女の演じる年老いた孤独な女性アルマンドは不幸な境遇にすっかり心を閉ざしていたのが、ヴィアンヌのチョコと優しさによって次第に心を開き今では無二の親友となっている。ヴィアンヌはアルマンドに悩みをうち明けます。「レノ伯爵や村の人たちが自分を村から追い出そうとしている」と。アルマンドは自分の誕生日パーティに村の人たちを招待してはどうかと提案します。ジュディ・デンチの自然で奥深い演技は素晴らしいです。アルマンドの誕生日パーティの日、招待した村の人たちやジプシーの人たちにはヴィアンヌのチョコが振る舞われ歌と踊りは夜遅くまで続きます。
 抑圧されていた魂が自由の空気に触れたとき・・、幸せのためにある筈の宗教がいつの間にか足かせになっていたことに気づいたとき・・、この小さな村の人たちは少しずつ変わっていくのでした。ヴィアンヌのチョコレートに導かれて。