髪結いの亭主

監督 パトリス・ルコント
出演 ジャン・ロシュフォール/アンナ・ガリエナ/ロラン・ベルタン

子供の頃から髪結いと結婚したいという願望を持ったアントワーヌは、理想の女性マチルドと出会い結婚する。数年のあいだ二人の愛は静かに続くが…




全編に渡って心地良い夢を見ているような幻想的な感覚に浸れる映画です。
マチルダ役のアンナ・ガリエナがとてもいい! 神秘的で悲しげな瞳、理容店でアントワーヌを見つめるときの微笑…。この映画で心に残るのは、髪結いの亭主、アントワーヌがラジカセで鳴らす中近東風の音楽。その妖しい旋律に合わせて、アントワーヌが理容店の店内を奇妙なふりをつけて踊り出す。映画を見終ったあと、ずっとこの異国のメロディとアントワーヌのダンス、マチルダの神秘的な視線が心に焼きついてふわふわとした感覚がずっと残りました。理容店のドアの向こうは忙しない日常が当り前のように繰り返され、髪の手入れにやってくる客たちもそれぞれ人生の悩みを抱えている。マチルダは客たちを優しい眼差しで迎え入れ、愛する人に接するように髪を洗い、手入れをする。後ろのソファでは、マチルダを満足げに見つめるアントワーヌがいつも座っていて、ふたりは視線を交わし仕合せそうに微笑んでいます。でも客たちはふたりに気づく様子もなく気持ちよさそうに目を閉じている。ふたりは時の静かに流れる理容店で幸せな10年間を過ごすのですが…。
この映画、エロティックな場面のせいで敬遠される人もいるみたいですが、本当はとても切なく哀しい物語なのです。