タイムマシン
監督 サイモン・ウェルズ
出演 ガイ・ピアース/サマンサ・ムンバ/ジェレミー・アイアンズ
オーランド・ジョーンズ/シエンナ・ギロリー/オメロ・ムンバ




原作はSF小説家の元祖的存在、H・G・ウェルズの処女作「タイムマシン」。監督のサイモン・ウェルズはこの著名な作家のひ孫なのだそうです。映画「タイムマシン」は1959年にジョージ・パルが製作、監督した作品が有名ですが、今回は最新のSFXテクノロジーを使って、壮大な未来社会を描いています。パッと見、B級だけれど(そこがねらい?でもある)、DVDの特典映像を見れば見るほど、この作品へのこだわりがひしひしと伝わってきます。どかーんっと予算をもらって大はしゃぎで撮影していったのではないのかな(メイキング映像ではいかに節約したか強調していましが)。主人公は19世紀も終わろうとしているNYで、大学教授をしているアレクサンダーという男で、恋人を暴漢に襲われて亡くし、過去へ戻って未然に恋人を助けようと考えます。完成したタイムマシン(この辺はとってもご都合主義でさっさと完成している)で過去へ戻りますが・・じきに死ぬ運命にある人間は、どうあがいても助けることが出来ないことを知ったアレクサンダーは、打ちひしがれたまま未来へ飛ぶ。スフィア(球体)に包まれたタイムマシンがアンティークで良い感じですし、未来へ移動しているまさにその瞬間の映像が素晴らしい。目眩く速さで陽は昇り沈み、地球を公転する月の影から太陽光がスポットライトのようにパッパと点滅を繰り返し、冬から春へ夏へそして秋。また冬へと季節はすっ飛び、芽吹いた草花の蔓がタイムマシンを入れた研究室の窓ガラスを這い伝い、そして枯れ、年月はトップギアへ入れたスポーツカーのように加速。タイムマシンに乗ったアレクサンダーは数十秒間で20世紀を垣間見ます。街並みは時代と共に変わり、洋服店のウインドウに飾られたマネキンの衣装もその年代に流行したデザインへ変化していきます。やがて高層ビル群がにょきにょきと建ち並び、空がどんどん高くなっていく。人工衛星が打ち上げられ、地球は小さくなり、スペースシャトルが月面の基地へ着陸するまでを斬新な手法で見せてくれます。この映画、特撮だけで腹八分になります。2030年、交通の手段は自転車というのがいかにも19世紀の人が考えそうで面白い。アレクサンダーはさらに未来へ飛びます。気の遠くなるような時間。浸食された地面は深い谷を作り、緑地は砂漠に、地形はすっかり変わり、近代文明も太古の遺跡となった80万年後の世界。気がつくとアレクサンダーは奇妙な言葉を話す人間に介護されていました。この映画、80万年後がどんな世界かを期待しているとちょっと肩すかしを食らうかも知れません。どこかで観たような映画があったなあと思い出したら「猿の惑星」を思い出しました。しかし「猿の惑星」は68年の公開だから、やはり「タイムマシン」を意識している筈で、こちらの方がオリジナルだとも云えます。80万年後の世界はエロイ人という、生活は原始的だけれど人間として真っ当な血を受け継いだ種族と、地底に住む残虐なモーロックという種族に別れていました。エロイ人はモーロック人の襲来を恐れ、崖っぷちに階層的に住居を造り暮らしています。アレクサンダーがエロイ人たちとうち解けたのも束の間、モーロック人が突然大挙して襲ってきました。モーロック人の顔、泣きそうなくらい怖いです。まるで宮城県のお祭りに出てくる”なまはげ”そっくり!この”なまはげ”、あっいやモーロック人の特殊メイクに100万ドルを掛けたそうで、音声解説では美術スタッフが「監督の家より高い」と冗談めかして語っていました。大画面で子供に見せたら泣き出すのではないでしょうか。アレクサンダーはエロイ人の女性を助けるためにモーロック人の住む地底へ乗り込んでいきます。この辺から痩せて弱々しげだった大学教授アレクサンダーが何故かアクション映画のヒーロー並に逞しくなり大活躍です。地底のモーロック人を統率しているのはウーバーという謎めいた男で、最近どういう基準で役を選んでいるのか理解に苦しむジェレミー・アイアンズが真っ白なメイクと脳が発達しすぎて脊髄を飛び出し盛り上がっている奇怪な造形の人間に扮して好演しています。アレクサンダーとウーバーとの一騎打ちが始まります、勝負の行方は・・!?