最近買ったCDでお気に入りの1枚



Steve Miller / Young Hearts - Complete Greatest Hits --
スティーヴ・ミラーの魅力とは一体何だろう。ふと思う。あの鼻にかかったダラけた声と妙にねちっこいメロディライン。風貌はどこにでもいそうな普通の太ったおっさんである。昔からスティーヴ・ミラーはおっさんでそれは70年代からすでにおっさんだった。スティーヴ・ミラーはシンセが大好きだ。たぶん夜中にひとりでああでもないこうでもないとシンセの音作りにハマっていたのだろう。そしてヒット曲の多くにはイントロにスティーヴ・ミラーの自信作であるシンセの効果音がついてくる。ブブブーン、プンワプンワプンワ。決して期待してはいけない。まともに聴いても幼稚園児がシンセのつまみをこねくり回して出来たサウンドの方が100倍は優れているだろう。今回のリマスター盤ベスト・アルバムを聴いてあらためてシンセの音にはひっくり返りそうになった。いやひっくり返った。つけ加えるとスティーヴ・ミラーの作曲した曲というのはたいがいがシンプルなロックンロールなので何故(なにゆえ)この曲の頭にシンセが??と疑問符だらけになるのであるが、それはスティーヴが付けたかったからという他には思いつかない大技なのだ。もちろん、ストレートでタイトなリズムに乗せた大ヒット曲、私の大好きな「Take the money and run」「Rockin'Me」「The Joker」「Space Cowboy」などもあるにはあるが。だけど私はスティーヴ・ミラーのチープなシンセの効果音も含めて彼の曲が大好きだ。思わず笑ってしまうが、どろまみれのわんぱく坊主を見ていてガバッと抱きしめたくなるような無邪気さが好きだし、体温以上の外気温に蒸されて一歩屋内の冷房の効いた部屋に入った時、汗まみれの身体をソファに投げだし「ふぃーーーーーーーーっ」と大息をつくときのあのくつろぎ感がスティーブ・ミラーの曲には感じられるのだ。さあ、今夜も聴こうスティーヴのダラけた”アブラカダブラ”を〜
Fleetwood Mac -- RUMOURS EXPANDED EDITION --
フリートウッド・マック最大のセールス(全米ナンバーワンを31週間キープ)を記録した名盤「噂」のリマスター&未発表テイク18曲を収めた2枚組CD。ジャンジャカジャンカジャンジャカジャンジャカとストローク・ギターが元気良く駆け出してくる、一曲目「セカンド・ハンド・ニュース」から、スティーヴィー・ニックスが寂しげに唄う「ドリームス」、印象的なアルペジオで奏でられる「もう帰らない」、リズムが心地良い「ドント・ストップ」、疾走感あふれる「オウン・ウェイ」、クリスティ・マクヴィのピアノ曲「ソングバード」は佳曲揃いのこのアルバムの中でも特に素晴らしい哀愁と優しさに溢れた名曲。続くスティーヴィーの「シルヴァー・マウンテン」はオリジナル未収録曲、LP時代は収録時間の制限でやむなく断念された曲(何年か前に出た「噂」のレコーディングを回想するLDで初登場)。突然転調するサビのメロディが印象的。スティーヴィーの力強いヴォーカルが魅力的。呪術的な不思議なリフとコーラスで始まる「チェイン」。クリスティのハスキーなヴォーカルと幻想的なコーラスが印象深い「ユー・メイク・ラヴィング・ファン」。身体が思わずリズムを取ってしまう楽しい「アイ・ドント・ウォント・ノウ」。ここで聴かれるスティービーの鼻にかかった声は可愛いすぎ!続く「オー・ダディ」はクリスティ・マクヴィがしっとりと唄う。ラストの「ゴールド・ダスト・マウンテン」はまたもや不思議な雰囲気のリフに乗せられスティーヴィーが夢見心地で舞い踊る(私はあまり彼女のひらひらダンスは好きではないがのだが)。どの曲もそれぞれ聴きどころがあり、コンセプトアルバムではないけれど統一性があって、同時期のイーグルスの名盤「ホテル・カリフォルニア」と双璧をなす完成度だと思う。ディスク2のアーリーデモ集では、「噂」の収録曲順に音源が配置されていて、未完成ながらこの時点で十分魅力的な名曲の原泉を楽しむことが出来る。
Jeff Beck -- JEFF --
ギターが吠えている。出てきた音にまずビックリ。59歳になる孤高のギタリストはいまだにシーンを爆走している。1曲目の印象、それはまるで賞味期限をほんの少し過ぎた”お腹に優しいヨーグルト”を、ひばりが頭上高くさえずる気分爽快な朝に食べ、足取りも軽い出勤途中で突然イノシシに頭突きを喰らわされたような激烈な腹痛に見舞われたときに発するキャッチーなあの一言「あっやられた!」に似ている。お腹の弱い人はだから、こころして聴こう。俄然、白い便器が恋しくなるはずだ。便通の調子の悪い人はこの1曲目が特効薬になるかも知れない、さあボリュームを上げて!・・おっと汚い話になってしまった。失礼・・。とにかくジェフ・ベックの新作「JEFF」の1曲目はインパクト大なのだ。そして素晴らしく格好良い!プロデューサーがインダストリアル系の(わたしは詳しくないが、機械的なビートにサンプリング音を織り交ぜたサウンド。クラブとかノイズとか云われる音楽)人のせいか、いかにも今風のサウンドにまとめられている。信じられないことだがそろそろ還暦を迎えようとしているジェフ・ベック。彼と同世代のギタリストもそれぞれに活躍はしているけれど、ジェフほど安定をすることをよしとせず常にドラスティックな変化を続けるギタリストも稀有だろう。豊かな音色をワザと歪ませたフレーズの上にふんだんに撒き散らされるスクラッチノイズや得意のアーミングによる狂暴な喊声、あるときは囁くようにあるときは性急に、仰け反りもがき、ライオンが口を大きく開け欠伸をするような歓喜に満ちた叫び、ギターという名の猛獣がのし歩いているのを目の当たりにして為す術もなく立ちつくしている・・狂暴なアルバムだ。
Steely Dan -- Everything must go --早い
前作「トゥ・アゲインスト・ネイチャー」から3年というファンにとっては意外すぎる早さ(オリジナル・アルバムということでは「トゥ・アゲインスト・ネイチャー」は20年ぶりの新作だった)でスティーリー・ダンの新作「エヴリシング・マスト・ゴー」が発売された。軽く跳ねるリズムにシングルトーンのクネっとしたギター、妙な曲展開、そしてドナルド・フェイゲンの特徴のある(20分前に目が醒めて、まだ重りの付いた瞼を無理矢理持ち上げ、昨夜のアルコールの名残が混じった苦い胃液に顔をしかめながら、折れ曲がった煙草を唇の端に乗せて唄っているような)肩の力が抜けきったヴォーカルは「すべて清算しなければ」というタイトルのこのニュー・アルバムでもそのまんまで一曲目が流れてきたときには妙な安堵感を覚えてしまった。今回は前作レコーディングの勢いを継いで一気呵成に仕上げた雰囲気が感じられ、アルバム全体のそこかしこにリラックスしたメンバーが演奏を楽しんでいる様子が浮かんでくる。浮き足立つリズムに合わせ、様子を窺いながらそろりと歩み寄るギターのフレーズ、短いカッティング、控え目なピアノの音、ちょっとしたアクセントが絶妙な女性コーラス。そして短編小説の世界を彷彿とさせる歌詞も味わい深い(特に2曲目の歌詞が良い)。個人的に言うと私は、3曲目「ブルース・ビーチ」がお気に入り。耳に残る心地良いリフに口ずさみたくなる良質なメロディは(フェイゲンが唄うと様になるんだな)何回聴いても飽きがこない。初回限定版のリミテッド・エディションには20分のDVDがついてくる。スティーリー・ダンのふたりがタクシーに乗り込み何故か、ふたりの間に入れ替わり立ち替わりタイプの違う女性をはさんで、興味津々ルームミラーを覗き込む女性運転手も交えて会話するといった内容(ドラマ仕立て)。全体の感想をいうと驚くような意外性はないものの、どこを取ってもスティーリー・ダン以外の何物でもない音であり、トータル42分というLP並の収録時間はちょっとした時間、夕食後のひととき、気晴らしのドライブ、寝る前のBGMなどにはぴったりだ。つけ加えると読書をしながら、さりげなく流すのも耳に心地良いです。
Nuno Bettencour -- POPULATION1
ネットの友人きびさんに送ってもらったCD、元エクストリームのギタリスト、ヌーノ・ベッテンコートの新作「ポピュレイション1」。ヌーノが在籍したバンド、エクストリームも友人に彼らの代表作「ポルノグラフィティ」を焼いてもらい、初めて聴いた。ハードで豪快なリフ、元気いっぱいのヴォーカルとよく考えられたコーラス、つい口ずさんでしまうメロディアスなライン、そしてテクニカルなギターソロ、いっぺんに気にいり即購入(友人にCDを焼いてもらい、そのアルバムがどうしても欲しくなって買うこともあるのだから、コピー防止CDはやめてほしい。きびさんに頂いた「ポピュレーション1」もamazonの1クリックで買いました)、1年以上経つが未だに車の中で聴いている。アルバムは好きでもバンドやメンバーのことにはあまり興味なくヌーノ・ベッティンコートも見たことがなかったけれど、きびさんのサイトで初めて彼の画像を見る。うーん、こりゃ惚れるよのう・・。というほど完璧なルックスなのだ!全裸でギターをほっそりとした肩からぶら下げていたが、ちょっとはフォトショップか何かで修正してるのでしょうか(ヌーノ側が)、最近は我々一般人でも簡単にペイントソフトで画像を修正できるので下手をすると全部修正ということもあるのだ・・。あっまあそんなことはどうでも良かった。この完璧なギタリストのソロ・アルバム「ポピュレイション1」はもはやハードロックの域を軽々と超えている。これ見よがしな高速ソロは捨て去り、ひとつの曲の完成に持てる力を全て注いでいる(ソングライティングから全ての楽器の演奏、ヴォーカルまで)。驚かされるのはこれだけ才能のあるギタリストがヴォーカリストとしてもズバ抜けたセンスを持っていることで、曲の魅力の半分はヌーノのヴォーカルに寄るところが大きいと思う。亡くなった母に捧げたというシンプルなバラード「フロウ」、ありがちだけれどちょっとひねったリフとメロウで泣かせるメロディの「スペースマン」→個人的に一番好き、ヌーノの特徴としてサビのメロディを作るのがとても巧いということがあるだろう。3曲目もサビ(サビというか後半に出てくるコーラス)がほんとうに良い。4曲目「アイアン・ジョー」も名曲。憂いのあるラインが心に響くバラード。このアルバム全ての曲が好きなのでひとつひとつ紹介出来ないけれど、もうひとつ特徴を挙げるとノリの良い曲はファンク・ミュージックからの影響が強く感じられる。本作はヌーノのがほぼ一人で仕上げたアルバムでバックが軽いが、ぜひ巧いプレイヤーを配してライブ演奏を聴いてみたいものだ。先日の来日コンサートは残念ながら行けなかったが、広島のきびさん、ヌーノのライブはどうでしたか(^。^)
Norah Jones -- COME AWAY WITH ME
ジャケットに惚れて買ってしまった。こういう時は大概において中身も大満足な場合が多い。聴きもしないでどうして判るのだろう。でもハズレ!は滅多にないのだな。きっとアルバムと波長が合ったのかな。一曲目からハスキーで表情豊かな低音にハマる。アコースティックな演奏をバックにゆったりと唄われる曲はどれもが素晴らしい。車のラジオで偶然彼女の声が聞こえてきた。DJが彼女を紹介している。ノラ・ジョーンズ、23歳、NYを中心に活動する女性シンガー・・だそうだ。23歳!!何と彼女、そんなに若かったのかあ!びっくりして急ブレーキを掛けそうになるが踏ん張る。大げさな演出も何もない空間でギター(これがまた良い)とピアノ、軽く流すドラムス。河の波間をゆるりと滑り行くボートに身を置き漠としたまま、姿を変えつつ流れる雲を見つめているような・・。最近、散歩のお供になくてはならないお気に入りの一枚です。
i am sam --アイ・アム・サム--
知能障害を持つ父親と7歳の娘の親と子の絆を描いた話題作のサウンド・トラック・アルバム。全曲ビートルズのカヴァーで、豪華アーティストによるビートルズ・トリビュートとしても楽しめる。ここに収録されている曲は誰もが知っている今やスタンダード・ナンバーとなってしまった曲は少なくて、ビートルズを聞きこんだ人なら思わずニンマリしてしまうような各アルバムの片隅にこっそりと収まっていながら、強烈な光を放っている曲が多く選ばれている(ビートルズの場合、アルバムにも入らない捨て曲でも他のバンドに提供して大ヒットさせていたけれど)。わたしのお気に入りは、ポール・マッカートニーのとても美しい「マザー・ネイチャーズ・サン」(シェリル・クロウのカヴァーも良いけど、ポールの方が100倍良い)。ジョン・レノンの名曲「アクロス・ザ・ユニバース」。意外に良かったポールの「アイム・ルッキング・スルー・ユー」。オリジナルをかなり忠実にカバーしているジョンの傑作「ストロベリー・フィールズ・フォーエバー」。誰が歌っても胸を打つ素晴らしい曲にしかなりえないポールのバラード「ゴールデン・スランバーズ」。そして唐突に始まるジョンの「アイム・オンリー・スリーピング」・・これ最高です。オリジナルも大好きだけどね(もちろんジョンのヴォーカルの方が100万倍良いですが)。ブラック・クロウズの演奏で渋いヴォーカルの「ルーシー・イン・ザ・スカイ・ウィズ・ダイヤモンズ」。ジョンの幻想的なヴォーカルが耳に馴染んでいるけど、ブルージーな”ルーシー”もなかなか聴ける。ジョンが16歳の時に死んだ母親とオノ・ヨーコに捧げた曲「ジュリア」かなり崩して歌っているが素晴らしい。ポールの「ウィ・キャン・ワーク・イット・アウト」天才ポールの一度聴いたら耳から離れないキャッチーなメロディが心地良い。ジョンがヒットさせるために曲をスピードアップしたことを一生悔いていた「ヘルプ!」。ここではゆったりと悲痛な内なる叫びを感じさせてくれる歌い方でこれはジョンも満足かな。続くジョンの「ノーホェア・マン」もギターの弾き語りでシンプルに歌われている。この曲も「ヘルプ!」同様、ジョンらしい内省的な歌詞が印象深い。世界を制覇し大金持ちのロックスターになったものの、自分は独りぼっちで邸宅に引きこもり酒とドラッグに溺れ、どうしようもなく荒んだ心の内を歌っている。このアルバムぜんぶで20曲、わたしとしてはもう少し削って良い演奏だけ選んだ方が良かったかなと思う。けれど、素晴らしい感動作の映画を観賞後、このアルバムを聴いて、ひとつひとつの場面とビートルズの名曲がリンクして思い出されるのは尚更感慨深く、素敵な気分になれるのは間違いない。
YES --MAGNIFICATION--
イエスの最新作。発売されてから数ヶ月経つけど聴くほどに味わい深くなる久しぶりの会心作。今回はイエスの特徴でもある派手なキーボードの代わりにオーケストラとの共演となった。ロックバンドとオーケストラの共演というとやたら大げさでノリもちぐはぐ、聴いている方もちょこっと照れくさいというか恥しい気分になるのだが、本作に関しては実に自然にオーケストラが溶け込んでいる。全く衰えを知らないジョン・アンダーソンのヴォーカル(これはもう世界の七不思議ですねー)、クリス・スクワイアの印象深いベースのフレーズ、いつも元気いっぱいのアラン・ホワイトのドラミングと聴きどころ満載ですが、なぜかギタリストのスティーヴ・ハウがいつものように疾走していなくて抑え気味の演奏。収録曲も統一感があってそれぞれに印象深い佳曲が並んでいる。ボーナストラックの「遙かなる思い出」は最新のライブから、オーケストラとバンドのスリルある展開が楽しめる。まだまだ元気なイエス、次回作では再びテクニカルなキーボードプレイヤーの登場を期待したい。
NATALIE IMBRUGILIA -- WHITE LILIES ISLAND --
4年前に発売されたナタリー・インブルーリアのデビュー作「レフト・オブ・ザ・ミドル」は再生不能になるほど車で聴きまくって(まだCD−Rに焼いてマスターは家で聴くということを知らなかったので)、輸入盤をもう1枚買ってしまったほどのお気に入りアルバムだった。愁いを帯びた彼女の声(寂しげではあるけれど力強い)が好きだし、どの曲もとにかくメロディが素晴らしい(ほおづえをついて窓の外を眺めているような情景)。4年ぶりの新作「ホワイト・リリーズ・アイランド」が音楽誌のレビュー欄で紹介され、彼女のややこしい名前を久しぶりに見たときは懐かしさでいっぱいになった。早速買ってきて聴いてみるとこれがまた良い。一気に彼女の作品世界へハマってしまった。アコースティックでシンプルな曲も彼女の伸びやかな声が映えるバラードも今風のリズムでノリの良い曲も、どれもが耳に焼きついて離れない佳曲ぞろい。またしばらくの間、車の中で流れ続けるだろうな。
OZZY OSBOURNE -- DOWN TO EARTH --
久しぶりに聴いたオジー・オズボーンの新作は恐ろしく格好良いアルバムだった。ネチっこく納豆が糸を引くようなヴォーカルは健在で、いや以前にも増して力強く伸びやかに唄っているのが驚かされる。耳よりももっと奥の部分をダイレクトに刺激する重量感たっぷりのギターリフ(ザック・ワイルド)に先導されるハードな曲はどれも傑作揃い(1.2.5曲目が格好良い)。何曲か収録されている美しいバラードはブラック・サバス時代から変わらないオジーのメロディ・メーカーとしての才能を感じさせる(オジーが作曲するバラードって安っぽいドラマのエンディング・テーマ曲みたいに聞こえるけど、何故かあのネチっこいヴォーカルで唄われると聴き入ってしまう)。ソロ第一作目の「ブリザード・オブ・オズ」と並んでこのアルバムが代表作になるのは間違いないだろう。CDエクストラにはこれまで未発表だったランディ・ローズの映像が収録されている。
MERCURY REV -- DESERTER'S SONGS --
アラン・パーソンズ・プロジェクトの名曲「タイム」が幻惑的に唄われるオープニングからどっぷりハマってしまった。音楽誌のレビューだけ読んで興味を惹かれるまま買ったアルバム。それも新作が売り切れていたので前作を買ってしまった。けれどこれが大当り!久しぶりに大満足のアルバムとなった。今にも止まってしまいそうな古びた映写機がゴトゴトと頼りなくスクリーンに映し出すのは、傷が入ってすっかり退色してしまった映像。不思議なイメージ。チェコの映像作家ヤン・シュヴァンクマイケルやブラザーズ・クエイの映画のような・・。哀しい目をした異形のモノがたどたどしくぎこちなく部屋の中を彷徨い歩く。ややだみ声のどこかジョン・レノンに似たヴォーカルと愁いを帯びた寂しげなヴォーカルの二人が素晴らしく良い。シンプルなメロディをおおいつくす洪水のようにドラマティックなストリングスと波間を揺れる懐かしい楽器テルミンの繊細な旋律が圧倒的に気持ちいい。新作「All Is Dream」もお奨め!
THE BLACK CROWES -- LIONS --
ブラック・クロウズがジミー・ペイジとのツアーを終え発表したニュー・アルバム。久しぶりに彼らを聴いたけれど相変わらず渋い!彼らの場合CDというメディアよりどっしりと重いアナログ盤をターンテーブルに乗せて聴きたい気分。焼きついた喉を振り絞るようにして唄うヴォーカルと堰を切ったように畳み掛ける乾いた演奏。スローな曲は懐かしい遠い昔に味わった感触を思い出させてくれる。今更ながら思うけど、ブラック・クロウズのサウンドにジミー・ペイジのギターってぴたりとハマると思うなあ。ギチギチした硬い音のリフで導かれる曲はZEPみたいだ。このアルバムを聴いてジミー・ペイジとの共作盤が聴きたくなってきたぞー。
THE POSIES -- AMAZING DISGRACE --
随分前にCDショップで買ったのだけど、どうしてポウジーズのこのアルバムを手に取ったのか一向に思い出せない。バンド名も知らなかったし・・多分、音楽雑誌のレビュー欄にポップで良い曲を書くバンドと紹介されてるのを見て興味を持ったのかな。他に数枚のCDを買ったのでポウジーズは後まわしになっていたけど、聴いてみるとこれがなかなか良かった。荒々しいバッキング(これは苦手)に乗せて唄われる曲はどれも印象深くメロディアスで、憂いを秘めたヴォーカルが泣かせる。輸入盤を買ってしまったのでライナーがなくてメンバーのことは良く分からない。何度か聴いてポウジーズはラックへ収まった。それから数年の間、次々と発売される新しい音楽に埋没していった・・。ある日、昔買ったこのアルバムを思い出して、ラックから引っ張り出し聴き直してみると以前よりずっと良く聞こえた。今は車の中で聴くお気に入りの一枚になっています。ところでこのバンドはもう解散しているのでしょうか?
BILL BRUFORD'S EARTHWORKS -- THE SOUND OF SURPRISE --
「イエスでプレイする最大の利点は最新のドラムキット(何百万円もする)を使えるところだ」と90年代前半にイエスへ再加入したビル・ブラフォードは冗談めかしてこう語っていました。それほどかつての彼は最先端のエレクトリック・ドラムが大好きだったのに、ここ数年はすっかりその熱も冷め(ロバート・フリップが用意したキング・クリムゾンのニュー・アルバムの為のセッションでも「もうエレクトリックは嫌だ!」と云ってスタジオを飛び出し、そのまま脱退した)、自らの原点であるアコースティックなジャズの視点から新しい試みにアプローチしているようです。本作はビル・ブラフォードが率いるジャズ・バンド、アースワークスの最新作。一聴するとかなりオーソドックスなジャズ・アルバムの香りがするのですが、ブラフォード独特の微妙なタイム感や意表をつくテンポチェンジは(以前のように百花撩乱のみだれ打ちは抑え気味)健在でじっくりと聴けば聴くほどスリリングな味わいを感じさせてくれます。
収録曲のどれもが超がつく難曲ばかりで、ビル・ブラフォードは端々に印象的なフレーズを聴かせながら、彼が採用した若手メンバーの演奏(これが実に素晴らしい)をしっかりとサポートしています。「僕はジャズ・ドラマーなんだ」デビューしてから30数年一貫してそう語っていたビル・ブラフォード。今、彼のプレイしている音楽こそが目指していたモノに最も近い形なのだなと思えるのでした。
PAUL McCARTNEY -- WINGSPAN --
音を聴いた瞬間、久しぶりにドキドキしたアルバム。ポール・マッカートニー版アンソロジーとも云える「ウイングスパン」プロジェクト。アメリカでは一足先にABC−TVでドキュメンタリー番組がオンエアされました。本当はこれが一番気になるんだけど、このベスト・アルバムもレコード会社のお任せ企画ではなく、ポールも選曲に携わったウイングス時代やソロの曲が聴けるとあって楽しみにしていました。2枚組みの本作は「ヒッツ」と「ヒストリー」に別れています。「ヒッツ」は英米のシングル・チャートで10位以内に入った曲が19曲、「ヒストリー」はポールやリンダが好きだった曲、思い入れのある曲が収められています。全曲リマスタリングが施されたとあって(Band On The Run収録曲は25周年記念盤のリマスター音源と同じだと思う)、どの曲も透明感が増し、楽器の音がくっきりと分離されて聞こえます(初期の曲はもこもこしていたベースがクリアに聞こえるのが嬉しい)。そして何よりもポールの声が瑞々しいですね〜。まるでタイムマシンで昔のポールを現代へ連れてきて再レコーディングしたような感じがします(^。^) しかし未発表曲が「Bip Pop〜Hey Diddle」一曲だったのはちと寂しい。「Hey Diddle」はポールらしいメロディのアコースティックな小品(ファンにはブートレッグで有名な曲)でここではリンダや子供たちと楽しそうにギターをつま弾きながら唄っています(ポールってこんな曲いっぱいストックしてるんだろうなあ)。9月に待望のニュー・アルバムをリリース後、ワールド・ツアーを行うと嬉しい発表がありました(^。^) 年末のウイングス・ボックスセット発売など今年はポールから目が離せないようです。
AEROSMITH -- JUST PUSH PLAY --
とうとう出ましたねぇ。エアロの新作。前作の「NINE LIVES」は個人的に70年代の傑作アルバム「ROCKS」に匹敵するほど良くって、1年以上クルマのCDチェンジャーに入れっぱなしで聴きまくっていたので、今度の新作もとても楽しみにしていたのですが、最初聴いたときはちょっと拍子抜けしました。曲も演奏も良いんだけど、前作にあった重厚で鬼気迫る雰囲気は消えています。最初はこの点がちょっと残念に思いました。と、ここまで書くとこのアルバムは気にいらなかったのかと思われるでしょうが、それが・・いい!やはり良いんです〜。CD−Rに焼いてクルマで何回も聴いているうちにだんだんと良くなってきたんです(^◇^;) とにかく楽曲がいいっ。スティーヴンのヴォーカルは少しやせたかなあと感じるんだけど、バンドのメンバーがリラックスし、レコーディングを楽しんでいるのが曲を聴いていて良く分かります。へヴィなロックンロールと思わず口ずさんでしまうようなバラードの絶妙なバランス。70年代のティストを感じさせながらも最先端のジャンルを巧みに取り入れ自分たちの音楽にしているのは流石。
GEDDY LEE -- MY FAVORITE HEADACHE --
RUSHのベーシスト、ゲディ・リーのファースト・ソロ。RUSHが活動停止中なので、ゲディのヴォーカルを久しぶりに聴きました。独特の高い声とブンブンと跳ねる骨太なベース・サウンド!オープニングナンバーなどはRUSHの新曲としても通用しそうな雰囲気。ゲディの声も昔はカン高くて少し苦手だったけれど、現在ではちょうどいい感じに聴くことが出来ます。声色が艶っぽくなって来たのも良いですね〜。どの曲もRUSHが好きな人にはお奨め出来ます。現在RUSHはドラムのニール・パートが何とか復帰出来そうな状態にあり(娘と妻を相次いで亡くした)、この春から新作のレコーディング作業に入っているそうです(^。^)
B.B.KING&ERIC CLAPTON -- RIDING WITH THE KING --
エリック・クラプトンにとって最大のヒーロー、B.B.キングとの共演盤。すごい!クラプトンがB.B.の運転手になっている。その昔、ギターの神様なんて有り難くもない称号を与えられたエリック・クラプトン(クイーンのブライアン・メイの方が俺よりもよっぽどスゴイ!とか70年代に語ってましたねえ)だけど、このアルバムではエリックにとって正に神のような(王のような?)ヒーローであるB.B.とすべての曲を分かち合っています(^。^) ふたりの共演はゲストとしての参加や映画「ブルース・ブラザース2000」の出演などこれまでにもあったけど、フル・アルバムでの共演は本作が初めて。それにしても、70歳を過ぎたと云うのにB.B.キングの圧倒的な存在感がすごい。野太い張り裂けるようなヴォーカル然り、愛器ルシールの泣きの一発チョーキング然り(この時、B.B.も一緒に泣いているように見える。いや泣いている)、クラプトンの存在が希薄に感じられるほどです。「DAYS OF OLD」かっちょいい〜。

STELLY DAN -- two against nature --
「ガウチョ」以来20年ぶりとなるスティーリー・ダンのオリジナル・アルバム。20年ぶりの新作というのもスゴいが、その新作が今年のグラミー賞で最優秀アルバムに選ばれたのもなかなかスゴいことです(功労賞の雰囲気も感じられました)。実はわたし、このアルバムで初めて意識してスティーリー・ダンを聴いたのですが、ちょっと変わったコード進行と乾いたリズム・セクション、そしてドナルド・フェイゲンのどこか醒めたヴォーカルにすっかりハマってしまったのでした。スティーリー・ダンのファンの方に過去の作品を教えてもらい「ガウチョ」や「AJA」を聴いてみるとこれもスゴくいい。どうして今まで聴かなかったんだろう・・と不思議な気持ちになりました。スティーリー・ダンはドナルド・フェイゲンとウォルター・ベッカーのユニットで、結成当初はバンド編成でツアーにも出ていたのが、スタジオで曲を練りあげていくタイプのふたりには馴染まず、やがてバンドのメンバーも抜けて行き今の形態(スタジオを長時間借り切って一流ミュージシャンに演奏させる)に落ちついたとのことです。サウンドの特徴としては限りなくフュージョンに近いロックという感じがします。80年代前半に流行ったAOR的な雰囲気もしますね。

FIONA APPLE -- WHEN THE RAWN --
BECK -- MIDNITE VULTURES --
以前のレビューを削除したので、久しぶりにこのCDを取り出して聴いています。ベック良いなあ彼のヴォーカル。悪く云うと抑揚のない無表情な唄い方。全身が脱力してナメクジになったような感覚、それでいて妙に明るい生まれ持っての能天気さ。個人的には前作の「オディレイ」がパワーがあって好みだけど(初めて聴いたベックのアルバムだったのでインパクトがあった)このアルバムも一度聴きだしたら途中で止められないパワーがあります。で、どんな音かと云うとこれが実に奇妙で個性的。ファンク・ミュージックがベースにあるんだけど、テクノっぽいヘンな効果音があちこちに散りばめられ、ちょっと外れたコーラスが絡む。と思えば、突然フォークっぽくなったりカントリータッチになったり・・。スローな曲は熱い風呂に入って「うがーーーーっ」って白目剥いてるときのような心地良い気分になるし、スピーディーな曲は躁状態で頭の中がお祭騒ぎのよう。どの曲も過剰に音の断片が詰め込まれているけれど、それでいながら気持ちいいのは基本的にメロディーメーカーなベックの作曲センスが優れているからだと思います。


FILIPPA GIORDANO --